無線LANという短距離通信における安価な標準規格が、デファクトになりつつあったとき、これは携帯電話に搭載されるだろうという予測を誰もがしたと思う。そうすることで、赤外線を使わずともデータ通信することができ、家庭内の無線LANネットワークを利用することができ、通りすがり通信することができるからだ。
家庭内の無線LANを利用せずにiモードが使えたら、電話をすることができたら格安で助かる。誰もがそう思うだろうし、FMCにおける1つの決着点でもある。しかしながら、既存の携帯電話キャリアは無線LAN端末はビジネスフォンにのみ限り、一般消費者への提供は行ってこなかった。bluetoothという近距離無線通信のためのチップを搭載しておきながら、だ。
その理由は携帯電話キャリア側に立ってみると、分かるかもしれない。当初、携帯電話キャリアの収入は、簡単には 崢模知繕癲廰◆屮僖吋奪販繕癲廰「基本料金」であり、そのうち´△亮入は大きいものがあった。´△亡悗靴討禄称明を採用することで通信料を抑え、まず先に品質を保つことを優先したのだと考えられる。
また補足として◆屮僖吋奪販繕癲廚亡悗靴討iアプリと呼ばれる携帯電話上のアプリケーションのダウンロード、着メロと呼ばれる音楽ダウンロード、動画ダウンロードなどのコンテンツを用意することでパケット使用量の向上を狙っており、ユーザーはその狙い通りに使用量を増やしている。またサイト課金、アプリ課金を行えるようにし、顧客から携帯電話の契約を通して決済ができるようにすることにより、サイト業者、アプリ業者が生きられる環境を整備することができたという点も大きい。
この収益構造において、無線LANによる「パケット通信」が行えるようになった場合、パケット使用量の向上を狙えず、パケット通信料は落ち込む。現時点において1顧客あたりの「通話料」vs「パケット料」では、「通話料」が落ち込んでおり「パケット料」が向上する方向にある。このうちパケット料による収入を減らす要素を持つ無線LAN導入には悲観的であった。
その後、パケット通信料の使用量の増加が始まり、コアネットワークも充実したのだろうか、パケット定額制が始まった。パケット定額制によって1ユーザあたりパケットに使用する料金の限界ができたことによって、特定ユーザの遊びだったパケット通信が、一般ユーザにまで浸透したと見ることができる。これによって56kモデム回線からISDN・ADSL定額制のときのような爆発的な広がりを見せた。
しかしながら、現状のADSL・光回線業者が懸念する悩みと同じ悩みを携帯キャリアも持つようになった、と予想される。それは数字的には適当だが、1割から2割の一部ユーザが7割から8割程度のトラヒックを発生させているのではないか、ということだ。定額制において単純に考えれば全ユーザの利用トラヒックの平均よりちょい上あたりに定額のラインが引かれるはずだ。このようなケースを考えると、定額の料金を引き上げているのは一部のユーザであり、これらのユーザの利用を制限したい思いに駆られる。それがau、EZwebの大量通信ユーザーを対象にした速度制限試験だったのだろうと推測される。
この2割程度であろう一部ユーザの過剰利用について考える必要がある。このようによく携帯電話のパケットを消費する利用者について推測していくと「PCユーザではない」「動画・音楽のダウンロードをしている」「年代にそれほど違いは無いが若年層ほど多い」という特徴が伺えそうだ。つまり、PC利用者ではないために携帯電話でエンターテイメントを楽しむ生活スタイルができており、その1つが動画・音楽である。それを収集癖のある人間は毎日のようにダウンロードする。よってトラヒックを圧迫するようになる、と考えられる。ニコニコ動画は携帯向けにもサービスを行っているが、このようなトラヒックが大きくなっているのではないかということだ。
彼らのトラヒックをどうするのか?という答えは、タイトルどおり「そろそろ携帯電話に無線LANが標準搭載されてもいい時期である」ということになる。その決定的な理由はこれまでつらつら書いたとおり定額制の普及だ。
定額制の問題は一部ユーザの過剰なトラヒック利用であるが、これを強制的に閉ざすことは課金コンテンツの成長を考えてもよろしくなく、別の方法で制限したいと思うようになる。そのいくつかの手法が、^貮凜罅璽兇梁唹萓限CDN構築L祇LAN搭載、だ。
,砲弔い討魯ャリアは積極的に行いたい理由、行いたくない理由はまだ自分自身見定められていない。確証は低いがユーザの噂による離反を恐れているように感じる。△砲弔い討鰐祇帯域の効率化にはならず、根本的な解決にならない。
だとすれば、の無線LAN標準搭載は重厚な考えではないかとも思える。以前考えられた無線LAN搭載によるデメリットは、従量制によるパケット使用量の低下による収入低下であったが、定額制である以上はそれほど影響し得ない。であれば、懸念材料となるのは、”そもそも定額制に入るユーザが少なくなってしまうこと”であると思える。しかし、もともと定額制を使ってきたユーザであるがため、家庭内無線LANの範囲外で利用したいというニーズも根強くある。
別の側面で見れば、スマートフォンという存在が既に無線LAN搭載端末を許容している。例えば、iPhone, Androidなどがそれだ。
そもそもこの文章で仮定してきた2割のトラヒックを利用するユーザの特徴は「PCユーザではない」「動画・音楽のダウンロードをしている」であり、そのスタイルは無線LANであっても変わらない。そのため、このようなユーザに対してインターネット回線を利用することによって高速にダウンロードできる点を付加価値により高価格でふっかけることに成功すればいい。もしくは現状の定額を据え置きにしたまま高トラヒックユーザを縛り、逆に高トラヒックユーザを追放した低額な定額プランを用意して残る7,8割のユーザをそちらに移行できれば、各人は幸せになれる。
もし高トラヒックユーザを無線LANで縛るのであれば、別のやり口もあり、例えば固定キャリアと協力することによって継続的な利益を得やすくするという手段もありえる。その場合、固定系との連携によるFMCというシナリオも存在しえる。
つまり、固定込みのストーリーをえがくとすれば、固定+携帯のFMCが出来た、固定でFMC用の無線LANアクセスポイントを配布する。その無線LANで携帯電話から電話が出来る、そうすると固定を使うので安くなる。さらに、PCをしたがらない定額パケットユーザに対しては、インターネットを通した高速回線を用意しましたよ、という流れになる。サイト課金・アプリ課金は携帯中心の方が個人会計できるので上手くいきそうだ。
そうした利用形態を想像すると、「そろそろ携帯電話に無線LANが標準搭載されてもいい時期である件」と思えたりする。もし搭載するのであれば、キャリアの足並みをそろえた搭載であることがFMCへのシナリオを考えても望ましい。
このシナリオへのスタートは各社「ケータイ無線LAN」の提供開始について 、【WIRELESS JAPAN 2009】KDDI、携帯電話向けmicroSD無線LANカードを参考出展さらには昨年のN906iLと様々に行っているように思える。
この動きがどのようになっていくのか、無線LANユーザは必見であろう。