802.11nは既存の顧客、特にマス向けに対しては特に強い追求力はないのではなかろうか、と思うようになってきた。802.11nの強みは帯域速度の向上だ。この利益は2つある。
遠くの距離を通信しようとしたが帯域速度が低くて使えない、もしくはまったく接続できない場合に効果があること、近い場所の通信をしたくHDなどの広帯域なコンテンツを閲覧したい場合に効果があること。
この2つに当てはまる顧客がどれほど存在しているのか不明瞭だ。今後購入するとすれば802.11nだが、買い替え需要があるかどうかは分からない。案外、WEPやWPA1の不都合で買い換える人が多くなるかもしれない。
しかしながら、802.11nは帯域速度の向上以外にも付加価値を狙ったものがあるようなので、少し古い記事だが紹介したいと思う。
IEEE 802.11nが無線LANの主役へ、従来版置き換えと用途拡大の動き(1/2) ― EE Times Japan
米Quantenna Communications社は、「宅内のどこでも、どのような状況でも安定した映像伝送が可能である」(同社)と主張する無線LANチップ「QHS チップセット・ファミリ」を2008年11月に発表した。受信感度が著しく下がり、データを安定して受け取れない領域(「デッド・スポット」と呼ぶ)を無くすための機能を複数組み込んだとする。具体的には、送信アンテナ側のビーム・フォーミング機能や、複数の無線端末間でメッシュ・ネットワークを動的に構成する「ベクトル・メッシュ・ネットワーキング」機能、4×4 MIMO(または2系統の2×2 MIMO)処理機能などである。
前半は802.11nについて。ベクトル・メッシュ・ルーティングについてはご存知の通り、ホームネットワークでメッシュを構成して迂回路を設定できるようにするもの。図1●無線LANメッシュ・ネットワークのイメージのイメージに詳しい(元記事は米クアンテナ,メッシュ型無線LANの構築が可能な11n対応チップを投入:ITpro)。
このQuantennaさん、Quantenna、IEEE802.11n対応チップセット発表 – 最大1Gbpsの接続速度を実現 | エンタープライズ | マイコミジャーナルといっていて、1Gbpsという速度。
最大1Gbps出せるならメッシュネットワークの提案が出来るのだろうけれど、1Gbps出すためにはアンテナ立てまくりとか帯域食いつぶす魔改造とかやってそう(調べてない)で、色々と問題ありそう。どうなることやら。
米W&W Communications社は、HD映像の無線伝送に向けて、遅延時間(処理時間)が2ms以下と短く、高い映像品質を維持できると主張する、コーデック・チップの量産を2008年12月中に開始する予定である。圧縮/伸長には、「H.264/ MPEG-4 AVC」方式を採用する。
この技術が意識しているのは当然、WirelessHD(60GHz帯のミリ波・ソニー松下NECなどのチーム)やWHDI(5Ghz帯・AMIMON、日立製作所などのチーム)で、これらの技術は障害物に弱いが802.11nよりも広帯域を実現できる。(正直なところ、5GHz帯を汚して欲しくないのでWirelessHDを応援したい。)
この2つの技術は広帯域を利用してHD映像を非圧縮で伝送することを前提としている。これに対してW&W Communications社は、障害物の問題は必ず起こりうるのだから可変の圧縮度を選択できることによって、体感の劣化を抑えることができるとしている。
正直なところ、h.264で圧縮して802.11nで伝送して遅延時間2msって有り得ない数字のような気がする。そもそもh.264で圧縮するだけで2msくらい必要のような??。プロファイル次第だけれども、時間圧縮をするにはバッファが必要で、Bピクチャを使った圧縮を行うためには、未来のフレーム情報が必要になる。それだけでも時間を食いそうな気がする。だから、Pピクチャのみで構成するのかしら、と思ってしまう。
よく分からない。
なんかもう、少しこの世界を離れてただけで、どんだけ進んでるんだよ、という周回遅れ気分。やっぱり、HDやるなら802.11nだ。