以前、無線LANインターフェースの普遍性はUSBを越えてという記事内において
PHSから、3Gから、WiMAXから無線LANに変換するインターフェースの製品化が進み、顧客は無線LANインターフェースを持つだけで自由に広域無線を切り替えられるような利用方法を、好むようになるのではなかろうか。
という議論を行ったが、WiMAXを無線LANに変換するためのルータが発売されていたようだ。詳しくはWiMAXを無線LAN接続に変えるルーターをチェックを見ていただきたい。
最近、イーモバイルにしろ、UQ WiMAXにしろ、USBタイプのインターフェースを必ず発売する。USBのインターフェースとして優れている点は規格が公開されており、誰でも開発できる点だ。最近のルータは(おそらくは)Linux化が進んでおり、USBのドライバもある程度そろえている。つまり、Linux向けにUSBドライバを作ってしまえば、公衆回線に対応する無線LANルータは簡単に作成できてしまう。
逆に言えば、USBの弱点は1つの製品を複数のPC、多人数で共有できない点だ。USBプリンタやUSBスキャナを共有したい場合、結局はネットワークを通した共有を必要とする。
そこで組み込みの安価な製品でIPネットワークを利用して共有を行うという思想で解決を図っている製品がいくつかある。ネットワーク上のプリンタ実現のための無線LANプリントサーバMini-102MGについての考察のプリンタサーバも、思想はそこにある。
無線LANとは単純には有線を無線にするための安価な道具だが、無線にすることのメリットは線がないと共に、「1つのものを複数で共有できるインターフェース」でもある。この強みは現在のノートPCにほぼ無線LANが搭載される状況下では効果的であり、かつ、携帯ゲーム機にも云える事だ。(無線LANの採用するCSMA/CAは、1つの無線帯域メディアをどのように複数端末で平等に共有できるかをテーマにしているのだから、当然といえば当然だ。)
今後の製品としての指針は、ネットワーク対応が必須化する中において、そのインターフェースを有線LAN、無線LAN共にIPという1つのものに集約していくことだ。そうすることによって、1つの製品をインターネット上、ホームネットワーク上を問わず、広い概念で利用することができ、また製品を複数人数・複数機器で共有することも可能になる。
ただ、悲しいかな、無線LANのアドホックモードは、それほどに簡単に利用できるものではなく、インフラストラクチャーモードとの共存も今のところ上手くできていない。つまり、インフラストラクチャーの効力が発揮できない場所における機器利用では、アドホックモードへの利用者が切り替えをしなければならない。つまり、アクセスポイントの近くでなければ資産を有効活用できない課題がある。無線LANで1ホップで機器が利用できる範囲にあるのにも関わらず、である。
既存の製品の多くは「無線LANアクセスポイント」もしくは「無線LAN子機」であり、アドホックモードを利用できる「無線LANノード」と呼べるような製品は少ない。単一の独立した無線LANノードとしての振る舞いは難しいし、ほとんどのケースで無線APとの接続で事足りるからだ。
これに立ち向かっているのは一部の無線LANアドホック接続可能なプロジェクター群であり、アドホックモードによる接続を可能にしている点において評価したい。持ち運び可能なプロジェクターを利用する場所として、AP支配下にあるケースはまれで、かつ高価であるプロジェクターは共有したいという考えが利用者にはある。アクセスポイントがない場所でもPCから無線LANで接続して映像を送りたいという要求を満たすものとしてアドホックモードを採用したと予想できる。が、「アドホック」と「インフラ」の手動による切り替えが必要な点において、戸惑いがあるのも確かである。
このインフラとアドホックをシームレスに変更できないという問題をMAC層レベルで解決するべく802.11sという規格があったようななかったような気がするが、こうした流れを分かってやっているのか分かっていないのかBluetoothの二の舞なのか、分からない。
今となっては、マルチホップするという点よりもシームレスにアドホックな利用とインフラ利用を切り替えできるという点において、USBよりも普遍性の高いインターフェースを実現するという意味において、802.11sに魅力を感じている。