Intel、100キロ先まで到達する『Wi-Fi』技術を開発中がInternet.comにて伝えられている。
Intel は年内にも RCP の販売開始を目指している。同技術開発の狙いは、近くに接続ポイントがなく、長距離の銅線ケーブルを敷設するにはコストが問題となる人口密度の低い地域や、ケーブルを敷設しても銅線盗難の恐れがあるような地域において、ワイヤレスのインターネット接続を提供することにある。
人口密度の低い地域を念頭に置いたこの発想は、スケールメリットでコストをまかなおうとする『WiMAX』(『802.16』系列のワイヤレス規格) とは対極にあるものだ。
また、WiMAX や従来の 802.11 系列技術と異なり、RCP の根底にあるのは送受信タワー同士の相互接続を Wi-Fi 技術で行なうという点だ。この時、タワーに設けた送受信ユニットは1対1で接続する。典型的な例としては、タワーの一方を基幹ネットワークに近い都市部に設け、もう一方を遠隔地に配置する形だ。そして遠隔地側の送受信タワーから、無線なり有線なりの形で近隣地域にインターネット接続を提供する。
無線LAN技術が登場したとき、その転送速度は1Mbps, 2Mbpsであり、有線LANに対して速度的不利があるために到底使えるものではない、と自分自身は考えていた。その後、11b,11g,11aなどの転送速度の向上が行われてきたが、上手くいかないだろうし、高価なままだろうと予想していた。しかしその予想は覆され、現在では11nによって300Mbpsと実に当初の300〜150倍の転送速度を実現しようとしている。
イノベーションのジレンマ風に考えれば、”当初の無線LAN”は有線LANの用途を代替するという考え自体が間違っていた。無線LANには有線LANが不可能な特徴(無線ゆえにできること)が存在し、そのために転送速度が遅くても問題ない用途が当初からあったはず。そのうち高速化が実用的なり、実際には転送速度が54Mbpsに達した時点で不便は感じなくなった。その後、300Mbpsの転送速度になり外部接続とのスピードを越え、家庭内・中小企業内では有線LANの代替が可能になっていった。
コアネットワークは安定性、高速性が顕著に求められる分野であり、無線が有線を駆逐することはありえなかった。非常に多くの多様なユーザを支えなければならないからだ。しかし逆に言えば、多くのユーザが接続しなければ有線を敷設するコストをペイできないということを意味している。過疎や離島などでは有線を敷設するコストをペイできない。ネットワーク企業は慈善事業ではないのでこの判断は正しい。これらの地域はいつまでたってもネットワークに接続できないという問題を抱えることになる。
その問題を解決するのが、今回のような数十キロ単位で無線リンクを実現する技術だ。おそらくは指向性の強いアンテナを用いた技術で、微細なアンテナの調節を必要とする。ある一定以上の距離であれば、有線LANよりも無線LAN敷設の方がコストが低いと試算されるのではないだろうか。よって今回のような技術が注目を浴びるに至っているのだと考えられる。考えてみれば、70年代にもALOHAネットワーク(と称されたハワイ諸島を接続するための無線ネットワーク)が存在しているのだから、新しく登場した考えではない。
WiMAXに関しても現状の大都市部では、既に3Gネットワークが網羅されているのでうまみは少ない。意義があるとすれば、全世界で同じ規格を使ってWAN接続できる点、つまり標準規格による大量生産によってコストが低下することにあると私は考えている。そのようなネットワークを構築する場所としてふさわしいのは、大都市圏ではなく、地方都市圏や過疎地域、離島であると思う。そうした場所とインターネットを接続する必要があるが、そのために今回の技術を利用することができる。
ただし、実際にこのようなネットワークを使ったことがないので分からないが、降雨減衰やそのほかの障害物によるリンクダウンは避けられないだろう。
本技術によって、有線で採算性のない地域にもブロードバンドネットワークが到達することを願う。