短距離無線のインターフェースとして802.11規格が策定され、10年以上経過した。今ではほとんどのノートPCに無線LANインターフェースが搭載されるようになった。その普及率は同じ短距離無線インターフェースであるBluetoothを上回るのではなかろうか。
ノートPCだけではなく、携帯ゲーム機、据え置きゲーム機、携帯電話、電子書籍等への普及も進んでいる。これは無線LANインターフェースの小型化、大量生産による生産コストの低下、そして標準の技術としての信頼性があるからに他ならないと考えられる。
その無線LANの普遍性を利用した製品が、最近になって、出荷され始めている。この流れが、無線LAN史上、新たな流れになる可能性があるので、伝えたいと思う。
最近になり、2つの製品が発売されている。この2つの製品の共通点は、無線LAN以外の広域ネットワークの通信を、無線LANによって行えるようにする趣旨の製品である。
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この「どこでもWi-Fi」は、ウィルコムの超小型通信モジュール「W-SIM(ウィルコム シム)」を使用することで無線LANのアクセスポイントがない場所でも無線LAN機器で通信できてしまうというものです
アイ・オー、データ通信端末経由でネット接続する無線LANルータ
WN-G54/DCRは、携帯電話・PHSのデータ通信端末を装着し、携帯電話・PHSの回線を利用してインターネットに接続できる無線LANルータ。 Cardbus型のPCカード装着スロットに加えて背面にUSBポートも用意し、PCカードタイプとUSBタイプのデータ通信端末を装着できる。WAN側のインターネット接続端子は持たず、インターネット接続はすべてデータ通信端末経由となる。
通常、このような製品に対する需要はそれほどない。ノートPCであれば、USB、CFカード等を用いれば済むからだ。しかしながら、今期になって話題になりつつある。
それは最近のゲーム機において、無線LANのみしか通信手段を持たない製品が増えているからだ。Wii,NDS,PS3,PSP,iPod touchなど、どれも無線LANインターフェースを備えている。これらのユーザーに人気が出ているとしている記事がある。
考えられるのは、NDSやPSP、iPodを外出時においてブラウザとして使いたいニーズが出始めているということだ。最近では任天堂はネットワーク機能を強化したDSiを出荷した。これは一般ユーザーに対してネットワーク機能を提供することに可能性を感じていることに他ならないのではなかろうか。
任天堂DSなどは無線LANインターフェースしか持たない。よって、広域どこでも使いたい場合には、無線LANに変換してくれるモジュールが必要であり、前述の製品が出荷され始めていうということになる。つまり、USBのようなインターフェース変換の役割を無線LANが担いつつあるということだ。
この流れを過去にさかのぼると、本来であればBluetoothやWireless USBなどがその役割を行うはずであった。しかし、Bluetoothでは公衆無線に接続するには通信距離が短すぎ、Wireless USBはイマイチ広がりを見せていない。そこで公衆無線にも接続できるし、短距離も問題ない無線LANに脚光があたっているということだ。
さらに無線LAN接続の利点は他にもあり、3GやPHS回線の持ち主が認めるなら、他者も無線環境につなげることができる。例えば、PCを使った簡単な会議をファミレス、喫茶店などで行いたい場合に役立つケースがありうる。
最近になって11nドラフトの製品化が進み、安価になり、標準の搭載が広がりつつある。これは11nインターフェースによって11gネットワークへの接続が行える点から、どうせ11gインターフェースを載せるのであれば、割安感があるためだと思われる。11nの普及が進めば、帯域幅におけるデメリットは解消される。
この向きで進んでいくのであれば、PHSから、3Gから、WiMAXから無線LANに変換するインターフェースの製品化が進み、顧客は無線LANインターフェースを持つだけで自由に広域無線を切り替えられるような利用方法を、好むようになるのではなかろうか。そうなるとすれば、顧客は日ごろから無線LANを利用するようになるので、その選択肢の1つとして公衆無線LANエリアへ自然に切り替えられるような道筋もつけられるようになろう。
この読みが正しいとすれば、将来的なユニバーサルインターフェースは有線はUSB 3.0、無線はIEEE 802.11nということになっていくのかもしれない。IP上でユニバーサルインターフェースを飛ばす製品はいくつかあるので、そのような向きが好まれる可能性はあるのではなかろうか。